「スバル R2」と言う自動車に3年間乗って感じた事、思った事 | アーカイブ
※当記事は過去ブログのアーカイブとなります。
私は人生初の自動車として「スバル R2」を中古で購入して利用していました。その「スバル R2」のネット上から拾える生い立ちや、実際購入してから3年間、乗って感じた事や思った事を記載していこうと思います。
スバル R2と言う自動車とは
「スバル R2」は、当時の富士重工業株式会社(以下スバル)が2003年12月に発売を開始した5ドアハッチバック型・軽セダンの軽乗用車の名称を指します。2010年まで販売され、スバルの年改を表すアプライドモデルはA型からG型まで設定されました。
「スバル R2」は過去に「スバル360」の後継として販売された「スバル R-2」と近しいネーミングとなっていますが、「1969年に発表された ミニカー「R-2」の名前を再び用いることで、脈々と受け 継がれているスバルのモノづくりへの想いを込めた。」とスバル公式から有るように一応意識はしているようでした。
実は私も調べるまでは知らなかったのですが、スバル R2のデザイン思想は2001年の東京モーターショーで公開された「HM-01」と言うコンパクトカーのコンセプトモデルに近似していると感じます。2001年当時はまだその後物議を醸すスプレッドウィングスグリルのコンセプト公開がされておらず、フロントフェイスはあまり個性的とは感じない形になっていますね。
その2年後、2003年12月に「スバル R2」は発表されます。昨今もあまり大差はないですが、当時の軽自動車市場はスズキのワゴンR、ダイハツのムーヴと言ったトールワゴンがヒットしており、スバルでのトールワゴンで言うとヴィヴィオの次にラインナップしていたワゴン型軽乗用車のプレオが好調で有ったものの、後発で有ったことも影響してか他社よりは売れていない状況だったようです。そこで軽トールワゴンカテゴリでは敢えて勝負をせず、当時下火だった軽セダンカテゴリで注力を入れ、軽セダンを求めているユーザーを全てかっさらおうと言った考えだったのでしょう。
発表当時のインタビュー記事でも分かる通り、軽枠いっぱいのサイズの大きさで勝負をしていない事を主張しているのが解ると思います。
【スバル『R2』発表】寸法で勝負しない—新コンセプト軽自動車
竹中恭二社長「R2は限られた軽自動車のサイズの中で、室内の広さを競うのではなく、スタイルや走り、安全性、環境といった機能に特化した軽自動車を目指し開発しました」「R2の評判がよければ、他メーカーも同じように、広さ以外の価値観を持ったクルマの開発を行うのではないでしょうか」
前期モデルは前述の通りスプレッドウィングスグリルが採用されており、当時のスバルとしてはこのグリルを採用した第一弾が軽乗用車のR2となっていました。その後海外専売で大型SUVのトライベッカや鷹目のインプレッサと続いていきます。
このグリルデザインはアルファロメオやフィアット出身のデザイナーだったアンドレアス・ザパティナス氏をスバルがチーフデザイナーとして起用した後に公表されたもので、個性的なルックスから市場ではとても好き嫌いが分かれたようです。デザインコンセプトは「航空機メーカーとしての歴史」を彷彿とさせるものとなっていました。しかし、初動のデザインに対して批判的な声に加え、そもそものR2の軽セダン・ハッチバックと言うパッケージの時点で販売台数が芳しくなかった為かR2の後期型からはそのデザインのグリルが完全に消えてしまいます。
確かに、私がR2の購入を考えていた時点ではこのグリルデザインはあまり好みではなく、避けていましたし、あえて社外バンパーが装着されているものを選択していました。しかし、後から純正に戻すとフェイス周辺の作りこみが良く出来ており、今では逆に個性的で好意的に感じるようになりました。BMWやアルファロメオ等にありがちなフェイスデザインの統一は悪くなかったと思いますが、確かに野暮ったい印象は否めませんでしたしね。でもここまで一気に無難なデザインにしなくても・・・。
機関性能や衝突安全性
今のボクサーエンジンを中心としたラインナップのスバルでは考えられませんが、1989年から軽自動車向けに利用していた水冷直列4気筒ガソリンエンジンのEN型の改良に改良を重ねた当時初採用となるDOHC自然吸気可変バルブタイミング機構のEN07Dエンジンを搭載し、更に今では当たり前となっていますがダイレクトイグニッション、電子式スロットルの採用にて当時の軽自動車としては最高評価だった燃費性能も売りにしていました。
R2はその他のラインナップでSOHC自然吸気のEN07Eを搭載した廉価グレード、ヴィヴィオ RX-Rで利用していたものと同等となるDOHCスーパーチャージャーのEN07Xを搭載した高グレード車も存在します。EN07Xを搭載したR2は、前期モデルが純正でハイオク指定となっています。其処までスポーツに振った構成を用意したのにも関わらずミッションは「i-CVT 7速スポーツシフト」のみ(笑)売れ行き次第でEN07X+MTを考えていたのでしょうかね。それとも燃費基準の問題?
また、スバル生産の軽自動車は全て四輪独立懸架を採用しており、R2を含めてハイトワゴン型からセダン型まで全てロールが少ない操舵や走行時の路面との接地感が良いです。もちろんR2でも採用され、高グレード車では前輪にフロントスタビライザーを標準装備しています。
当時の軽カテゴリの中では珍しく衝突安全性を見据えた「新環状力骨構造」のモノコックボディをR2では採用し、衝突試験では高評価を残しています。R2の販促カタログでは4代目レガシィ(BL/BP)系との衝突試験の写真が掲載されており、R2より車重が重い車と当たっても負けない程度の強度を保っている事を売りにしていました。
ただこれはメーカーの販促資料なので盛っている部分が有るかと感じがちですが、初年度発売から15年も経っていると流石に衝突時の評判が伝えられています。
福岡県で、JRの特急電車と車が衝突する事故がありました。運転していた女性は、車ごとはね飛ばされましたが、奇跡的に無傷でした。
13日午前10時半前、福岡県北九州市のJR日豊線の踏切で、軽乗用車が立ち往生し、 特急電車と衝突しました。車を運転していた34歳の女性は、車ごとはね飛ばされ ましたが、けがはありませんでした。乗客340人も無事でした。調べに対し、女性は 「遮断機がおり、出られなくなった」と話しているということです。
https://news19.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1142239493/l50
特急列車に突っ込まれた場合でも大きく大破せず、乗員が死傷していない事象で当時ネット上で話題になっていました。その他のR2の事故でも衝突後炎上などは有るものの、乗員室内の形は保っている物が殆どに見受けられます。これだけ年数が経っており、台数が有りますし流石に死亡事故0とはならないでしょうが、2003年の軽自動車でその他の車種・メーカーのモデルの評価を考えると悪いものではない事が解ると思います。
ただ逆に、剛性が高いフレームの影響か、このサイズの軽セダンとしては車重が重いと言うデメリットが有りますけどね。
以上のように自動車の構造に理解が有る人からするとスペック上のメリットは多かったのですが、当時の比べられる対象がワゴンR、ムーヴ、ライフ、ekワゴンのようなトールワゴンで、世の中の流れもトールワゴンを選ばれる傾向が有りました。尚且つ、市場で日常の足車として軽自動車を選ぶボリューム層が衝突安全性をそこまで気にしていなかったと言う所も有るでしょう。もちろん有るに越したことは無いですが、軽規格を選ぶ時点で割り切っているので、それよりも室内が広いほうがウケたんでしょうね。R2では強いて言えば燃費重視で選んだ方も居たんでしょうか。コンセプトデザインの流れから見る限り、スバルとしてはコンパクトカーを作りたい上でよりコンパクトに収めるのであれば軽規格の方が所持しているエンジン的にも都合よく、売っていく中で最良と考えて軽規格に抑えた上での販売でしょう。最初から軽規格ありきでの開発ではないように感じます。ただ、出したものは軽自動車ですし、購入層は”軽規格”から選び始める流れ・また逆に”軽規格”で括って避けると言う購買層の存在を考えると普通に考えれば解りそうな気はしますけどね。結果論ではありますが。
そう言った流れでスバル R2は2003年11月から2011年4月までの総生産台数134,005台、総販売台数が133,121台といまいち売れず、R2と切り替えて縮小予定だったプレオを再増産、その後R1やR2のパーツを多く利用した上で、トールワゴンとなるステラを市場に出したのでした。因みに現在の売れ筋の軽トールワゴンのN-BOXはたった1年で21万台近く売っています。この流れは悪いとは思いませんが、軽セダン好みの私からすると色々悲しいですね。売れないので仕方ないのですが。
私が入手したR2
私が入手したR2は、アプライドモデルがAの初期型、DOHCスーパーチャージャーのEN07Xを搭載したSグレード、フルタイム4WD搭載車でした。型式は”LA-RC2”。今回調べて分かりましたが、前期のF4WDモデルのLA-RC2は902台しか販売されていないようです。カラーは良くあるブルーの”WRブルーマイカ”とは違い、若干色が薄い”プリズムブルーメタリック”です。WRブルーマイカの設定は後期型からですので狙っている方は注意しましょう。
まずそもそもなぜR2を購入するに至ったかと言うと、色々な車庫の関係上軽枠である必要性が有ったのと、当時は基本的には近場の足であり、当時はオートバイ(YZF-R3)を購入したてでしたし、車に対して強くお金は掛けたくないという考えが強かった事も有りました。また、私の父親が過去ヴィヴィオ RX-Rに乗っていた事もあり、同じエンジンを利用している車両である以上、エンジン自体の勝手が聞けば想像つくのではないかと言う点も後押ししましたね。基本は私が運転しますが、AT限定の母親が乗る可能性を考慮するとATである必要も若干有りました。正直R2と言うモデルへの拘りはあまりなく、今後登録車に乗り換える前提で選んでも良いかなと言う所ではありましたが、買うのであればトータル40万ほどの低い予算内でも登坂力などで色々拘りたいと言う点があり、それに沿った形でした。
購入した時点ではR2のこと自体は良く解っておらず、ヴィヴィオ RX-Rと同じエンジンを積んだ新しめのスバルの軽自動車程度にしか思っていませんでした。そもそもR2と後述のR1の違いも良く解っていなかったと思います。また、購入したR2のSグレードはアプライドAの初期型ですので、ハイオク指定となっていました。クルマに限らず機械製品の世話をする事自体は気分が乗れば嫌いではないので、ハイオク指定でも特に何も思わず乗っていましたし、加速感やトルク感等、走行性能上に一切不満は有りませんでした。加えて、R2のSグレードでは最近では良くあるCVTで段階変速を疑似的に作り出すマニュアルモードが搭載されており、エンジンブレーキの調整にも活用できます。
カーセンサー経由に掲載されていた新潟(長岡)の中古車屋に取りに行き、引き渡し直後の写真です。今見ると若干色々と恥ずかしい装備となっていますが当時は何も思いませんでした(笑)
引き渡し時点で12万キロ走行済みで、10万キロ時点でタイミングベルト交換済表示でした。この車両からトップ画像のように純正のHIDヘッドライト、外観ではダウンスプリングを利用して若干ローダウン、フロントバンパーを純正に戻し、リップスポイラーを装着しています。その他小物類も変わっていますね。そこから3年ほど乗り、色々とあり合計3万キロほど走行した上で友人へ譲渡を完了しました。
R2とR1の関係
スバルR2には姉妹車として、更にコンパクトな”スバルR1”が存在します。R1はR2とは違い、コンセプトカーとなる「R1e」の公開時点で既にデザインの原型は出来ていたようです。こちらもR2と同様スバルとしてはコンパクトカーを作りたい上でよりコンパクトに収めるのであれば軽規格の方が所持しているエンジン的にも都合いいという形で作られたように考えられます。
R1はR2よりも全長が110mm、ホイールベースは165mm短く、R2ではグレードS以外14インチだったホイールが、全てのグレードで15インチを装着、フロントスタビライザーも全てのグレードで装着しており、ベースモデルでの走行性能を底上げした車両と分かります。ただ、近しいグレードのR2と10kgしか重量に差が無い(モデルによっては同じ870kg)ので、コンパクト版ではあるものの軽量版と言う位置付けにはなりませんが。
また、R1でも乗車定員4人となっているのですが、後部座席に人を乗せる事が認められているのが不思議に感じるほど狭く、実質無いようなものだと思っています。以下の紹介ビデオを見ると分かるかと思います。
R2とR1は衝突安全性や基本的なセールスポイント、機関なども共用してましたしスバルの中で似ているクルマの姉妹車で間違いないものの、私の中ではR2は1台持ちでも幾分かは許容できる日常車に近く開発されたものであり、R1は1台持ちでは許容が難しいニッチ車として開発されたものだと思っています。私はR2に乗り続け、色々背景を学んでいくとやはりどうしてもスバルが作ったEN07型エンジンを搭載した最後の一番のこだわりの小型自動車に乗り続けたいと感じ、デザインだけではなく開発された流れを見ていると益々我慢が出来ず、R1に目移りしてしまう事が多くなり、乗り換えと言う形で最終的にR1を入手してしまいました。
現代の最新車と比較すれば流石に双方見劣りはしますが、R1とR2を実際手元で比較し、色々な所を見比べると外装では細かいところまで共用部品が少なく、R2で個人的に気に入らなかった箇所が全てR1では解消されていました。しかし、乗っていたら気にならなくなるとは思いますが、デザインは正直R2の方が好みではありますが・・・。
さいごに
私の性格上、新しい物好きではあるのですが新しい物が出ない上で納得ができる販売や開発の背景、装備などが認められれば新しい物以上に目移りをせず、大切に出来ると感じています。スバル R2は走行性能や機能性などは全く不満はなかったのですが、R2が好みになればなるほどスバル R1が頭に浮かんでしまいました。R2とR1は基本構造や機関などは殆ど共用しているので、R2で利用していた遺産や整備やパーツ入手ノウハウは使えますし、利用していたパーツなどは全て移設出来ました。結果的にR2を買った事や世話をした事は無駄にはなりませんでしたし、とても有難ったです。
恐らくサンバーバンについてもR2が無ければ買って/作っていなかったでしょう。入手したR1についてや、細かいところの比較、入手して感じた事などは別記事にて紹介します。
参考
スバルR2が好きでこちらのページに辿り着きました。三栄書房の「モーターファン別冊2004年版軽自動車のすべて」に収録されている「R2のすべて」のデザイン開発紹介ページには、R2は実際、HM-01をベースにした、とありました。(正確にはデザインスタッフがR2として最初に提示した案(どっちかというとステラとかプレオ系のデザイン)に当時の竹中社長がNGを出し、急遽HM-01に白羽の矢が立ったようです。HM-01をベースに起こした次のデザインでR2の素地が完成し、さらに検討を経る過程でスプレッドウイングスグリルが出てきたようです。今見るとR2の初期のグリルデザイン、味があって唯一無二で良いですよね。以上ご存じだったかもしれませんが。